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【法令用語】 法令用語 [法令用語]



法令を使うこと、そして法令を作ること。


現在の仕事では、その両方に携わっている。


毎日毎日、法令に触れているのだが、その度に頭を悩ませている。


困ったことに、法令で使われている用語(法令用語)は非常に分かりにくい。日常的・一般的に使われている意味と異なっていたり、同じ法律に出てくる同じ言葉なのに意味が違っていたりすることもある。法律学において「論点」などというものが出てくる原因の一つには、法令用語が一義的に理解できない分かりにくいものであることが関係している。


例えば、以下の民法の条文。


(即時取得)
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。


ここでの善意とは、善良な心や他人のためを思う心のことではない。


民法192条における「善意」とは、“取引行為の相手方が動産について無権利者であることを知らないこと”である。


法令用語では、ある事情を知らないことを善意、知っていることを悪意という意味で使っているが、条文ごとに「ある事情」というのが違ってくる。いろいろな条文で使われている「善意」(もしくは「悪意」)の意味を正確に把握しようとすれば、どの事情について知らないことなのか(もしくは知っていることなのか)まで理解しておかなければならないが、そうすると条文ごとに「善意」(もしくは「悪意」)の意味が違ってくるので大変である。


また、以下の刑法の条文。


(逮捕及び監禁)
第二百二十条  不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。


はじめてこれを見たときには、なんてシンプルで分かりやすい条文なんだと思ったものだ。


しかし、この条文にはいくつかの論点があり、その中には「逮捕」の意義、「監禁」の意義に関するものもある。


いや、「逮捕」はつかまえることで、「監禁」は閉じ込めることだろう、何を小難しく考える必要があるんだ。そう考えていた時期もあった。ところが、やはり、実際に小難しく考える必要が出てくることもある。


具体的には、「逮捕」に関しては、単に後ろ手で縛って放置しただけの場合。「監禁」に関しては、原動機付自転車の荷台に乗せて1km以上走行しその間降りられないようにした場合。


それぞれ刑法220条の罪が成立するか。


答えから言えば、前者に関しては「逮捕」に当たらず220条の罪は成立しない(と一般には考えられている。ただし、別途208条の「暴行罪」が成立する)。後者に関しては「監禁」に当たり220条の罪が成立する(判例)。


何故と思う人がいるかもしれないが、それは、前者は実務上使われている「逮捕」の定義に当てはまらないから、後者は実務上使われている「監禁」の定義に当てはまるから。


「逮捕」とは、人の身体を直接的に拘束して、行動の自由を奪うこと。この定義からすると、単に後ろ手で縛って放置しただけで自由に移動できる場合は、行動の自由を奪っておらず、「逮捕」とは言えないということになる。


「監禁」とは、人の身体を間接的に拘束して、行動の自由を奪うこと。こんな定義をされてもちょっと分かりにくいが、要するに逮捕以外の方法で行動の自由を奪うことくらいに考えてよい。原動機付自転車の荷台に乗せて1km以上走行しその間降りられないようにした場合は、荷台から動けなくして行動の自由を奪っているが、身体を直接的に拘束していないので、「監禁」と言えるということになる。


法令をきちんと理解するためには、法令用語の意義を正確に把握しておかなければならない。だが、それがなかなか難しい。司法試験に出てくるようなメジャーな法律であれば、コンメンタール・逐条解説といった解説書がしっかりとそろっているので、それを見ればいい。しかし、非常にマイナーな法律(その分野の人には申し訳ないが)、政省令のレベルになると、調べるのも一苦労である。また、法令を作る際は、想定外の解釈・運用がなされて法令が立法者の意思から離れたものにならないよう、なるべく一義的に理解される工夫をするのだが、それも難しい。


いろいろと長々書いてきたが、要するに、法令を使うこと・作ることに携わっているのだから、法令用語をきちんと体系的に理解し、法令の文言に対する感覚を研ぎ澄ましておきたいということだ。






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